東京高等裁判所 昭和28年(ネ)126号 判決
控訴人等代理人は「原判決を取消す。東京地方裁判所昭和二十四年(ワ)第五一〇六号事件の執行力ある判決正本に基く控訴人等に対する東京都品川区中延町二丁目二百九十三番地所在、家屋番号同町百七十二番木造トタン葺二階建一棟建坪十六坪二勺一才、二階十五坪一合四勺六才の家屋明渡の強制執行はこれを許さない。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。
当事者双方の事実上の主張、並びに証拠の提出、援用認否については控訴人等代理人において、「原裁判所は訴訟の当事者である原告等(控訴人等)及び被告(被控訴人)双方に判決言渡期日を告知せずに判決を言渡した違法がある。即ち、原裁判所は昭和二十七年七月二十二日午前十時の口頭弁論期日において、弁論を終結する旨を告げ、判決言渡期日は追つて指定する旨を告知し、その後同年十二月十八日に至り判決言渡期日を同月二十五日午前十時と指定し、該期日は同月二十日被告(被控訴人)代理人に告知された。然るに原告等(控訴人等)若しくはその訴訟代理人には右判決言渡期日は告知されていない。而して、右判決言渡期日において、当事者双方不出頭のまま更に判決言渡期日を昭和二十八年一月十六日午後一時と指定したものであるが、当事者双方とも不出頭の場合に判決言渡期日を告知しても何等効力を生じない。しかるに原裁判所は右判決言渡期日において当事者双方不出頭のまま判決の言渡をしたものである。結局原裁判所は判決言渡期日の指定なくして判決の言渡をしたことに帰するから原裁判所の判決言渡手続には瑕疵がある。よつて、本件は原裁判所に差戻さるべきものである。」と述べた外、原判決事実摘示と同一であるからこれを引用する。
三、理 由
一、控訴人等代理人の「原裁判所は当事者双方に判決言渡期日を告知しないで、判決の言渡をした違法がある。」との主張について考えてみる。
本件記録によると、原裁判所は昭和二十七年七月二十二日午前十時の口頭弁論期日に弁論を終結し、判決言渡期日は追つて指定する旨を告知したが、昭和二十七年十二月十八日に口頭弁論期日外において判決言渡期日を同月二十五日午前十時と指定し、当事者双方代理人に右期日の呼出状を発送し、該呼出状は被告(被控訴人)代理人杉本粂太郎に対しては同月二十日送達されたが、原告等(控訴人)代理人佐々木清綱に対しては到達しなかつたに拘らず、原裁判所はそのまま昭和二十七年十二月二十五日午前十時の判決言渡期日において、当事者双方代理人不出頭のまま更に判決言渡期日を延期し、昭和二十八年一月十六日午後一時と指定告知し、該期日に当事者双方代理人不出頭のまま原判決の言渡をしたことが認められる。
従つて、原裁判所は原告等(控訴人)代理人には判決言渡期日を通知することなくこれを知る機会を与えないで判決を言渡したことにおいて、その言渡手続は当を得ないものというべきであろう。しかしながら、叙上の事実からみると、被告(被控訴人)代理人には指定された第一回の判決言渡期日は適法に告知され、該言渡期日には当事者双方は出頭しなかつたけれども、該期日において、原裁判所は判決言渡期日を延期して第二回の言渡期日を指定告知したものであつて、その期日の呼出状が当事者又はその代理人に送達されないで、当該期日に判決の言渡がなされたものではあるけれども、本件においては原裁判所が言渡期日を全然指定しないで判決の言渡をしたものではないから、控訴人等代理人所論の如く、判決言渡期日を控訴人等若しくはその代理人に通知せずして当該言渡期日に判決の言渡をなしたとしても、かかる手続上の不備は未だ言渡行為そのものの瑕疵ではなく判決内容に影響を及ぼさないものと考える。従つて原判決の言渡を無効とすべき事由はないものと解するのが相当であるから、原判決の言渡を違法として本件を原裁判所に差戻すべきことを訴求する控訴人等代理人の主張はこれを採用することはできない。
二、当裁判所は控訴人等の本訴請求を理由のないものと認めるものであつて、その理由は原裁判所が原判決の理由において説明するところと同一であるから、これを引用する。
然らば控訴人等の本訴請求を棄却した原判決は相当であつて本件控訴はいずれも理由がないからこれを棄却すべきものとする。
依つて、民事訴訟法第三百八十四条、第九十五条、第九十三条、第八十五条を適用し主文のとおり判決する。
(裁判官 浜田潔夫 河合清六 仁井田秀穂)